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【第4回】元気高齢者の笑顔あふれる街づくりを目指して

超高齢化社会の日本! 現状と課題

業界紙の新聞制作や社内報・広報誌の編集・制作を柱に、創業56年を迎える当社は、伝えたい情報を顧客の要望に合わせて調理・味付けを施して発信することを生業にしてきました。現会長で創業者である福山琢磨(87歳)が昭和59年に開発した「自分史マニュアルメモリーノート」は、全国に60社以上の代理店契約を結ぶなど、自分史ブームの火付け役となり、戦争体験を中心に多くの自分史を世に送り出してきました。

バブル崩壊を経て平成の時代に入ると、企業の統廃合やM&Aが活発化するなど、業界紙の広告・購読収入に陰りが見え始め、それに同調するように業績が悪化しました。自分史についても、大手出版社・新聞社が中心となり、自分史事業をスタートするなど、苦戦を強いられるケースが徐々に増加していました。

二代目社長の福山耕治(52歳)は、この苦境を乗り越えるため、平成27年12月に営業部で一泊研修を実施。SWOT分析を行った結果、自分史と超高齢化社会に焦点を当てた業態変革に取り組む決意をしました。

その理由として、65歳以上の日本の高齢者は3600万人以上で、高齢者率でみると世界一となっています。平均寿命も84.3歳と同じくトップとなっており、2025年には高齢者の5人に1人が認知症になると推計されている事実を知ったからです。

 

嗅覚に注目 アロマテックインキの開発に着手

回想法を活用する自分史作成は、心理療法として認知症予防にいいとされていますが、唯一無二の付加価値を加えることを念頭に、アロマオイルを使った嗅覚刺激に注目しました。嗅覚は記憶の格納庫とされる「海馬」がある「大脳辺縁系」とダイレクトに繋がっている唯一の五感で、交感神経を刺激するアロマオイルを香料インキ化。自分史記入ノートに塗布することで、回想法と嗅覚刺激のダブルの効果を発揮する可能性があると考えたからです。

アロマテックインキイメージ

回想法と 嗅覚刺激のダブル効果で認知症予防

 

生活歴を引き出すことでアセスメントに繋げる

アロマオイルを香料インキ化したアロマテックインキを開発しながら、文具展や介護業界の展示会に出展するなど、市場の声を収集しつつ経産省の「新連携」認定を受けました。介護業界で働く人から、「レクリエーションがうまく機能していない」という声が多く聞こえてきました。介護施設の利用者が生きがいをもって余生を過ごすために、アセスメントが重要であるというのは、この業界では一般的です。しかし理想と現実はかけ離れていることが往々にしてあります。人手不足で有名なこの業界で、アセスメントにかける時間は当然少なく、仕事として“作業をこなしている”という施設が多くありました。

自分史はその方の生きた証を記録にした「生活歴」そのものです。多くの声を基に、この自分史事業を通じて、アセスメントに役立てることができると確信しました。テストマーケティングで介護する側とされる側、互いの生活歴を共有することで、コミュニケーションが深まることも分かりました。ひょっとしたら介護現場で問題視されている人間関係による離職や、虐待問題にも効果があると踏み、「自分史レク®」を令和元年4月から介護施設向け事業として本格的にスタートしました。

アロマテックインキ展示会の様子

福祉関連の展示会に多数出展

九州のグループホームで自分史レクを行う福山氏

九州のグループホームで自分史レクを行う福山氏

 

一般向けの「自分史サロン®」をスタート

認知症予備軍とされる軽度認知障害(MCI)は国内で約400万人と、認知症患者とほぼ同数いるとされていますが、何も対策をしなければ2.5年で半数の方が認知症の領域に入ることが分かっています。認知症になれば、健常者に回復することは今の医療では不可能ですが、MCIの時点で対策を講じることで、46%の確率で回復することが可能です。

このことから、一般の方向けに「自分史サロン®」を令和2年1月に大阪の中之島図書館で開催しました。

中之島図書館で開催した自分史サロン

中之島図書館で開催した自分史サロン

アロマテックノートの概要

アロマテックノートの概要

 

回想法の効果を最大限引き出すプログラム

受講者は近畿圏の60~80代の男女30名。第一回は「認知症の基礎知識講座」と「認知症簡易テスト」を行いながら、幼少期に思い出のある街の地図を作成する「思い出マップ」の作成からスタートしました。自分史サロンは週一回(全5回)で行い、年代別に4~5人のグループに分けて行いました。回想法の効果を最大限発揮させるため、「傾聴」「受容」「共感」を引き出すため、グループ内の会話を引き出すことを重視し、自分史作成については宿題として次回までに記入するという流れで進めました。

ちょうどこの頃から、新型コロナウイルスの感染者が世界中に広まり始め、受講生も外出を控える傾向が強くなりましたが、最終的に16名分の自分史を完成させることができました。自身の自分史を完成させた受講者は感無量の表情で自身の“分身”を受け取り、参加者のこぼれる笑顔と感想からも非常に有意義であったことが実感できました。

受講後は「せっかく作り上げた自分史を近親者に渡したい」という声が多く、オプションとして複製本サービスを展開。12名の方から依頼を受けました。

参加者の声

参加者の声

受講生完成品

受講生完成品

 

高齢者が輝ける社会作りに向けて

この原稿を作成している令和3年11月時点で、新型コロナウイルスの感染は収束の方向へ進みつつありますが、予断を許さない状況です。第一回の自分史サロン開催から約2年が経とうとしています。自分史レクも介護施設の人流抑制措置からサロンと同様に実施できていないのが現状です。オンラインでの自分史レクも試みましたが、やはり初対面の人同士がオンラインでコミュニケーションを図るには入口が難しく、足踏み状態が続いています。

しかし、苦難の後には必ず福門がある。現在は認知症という社会課題を解決しながら、認知症の予防と共生を目指し、(一社)認知症予防活動コンソーシアムとの協業体制を構築しながら、オンラインとリアルを活用した、高齢者が新たな花を咲かすことができる場の提供を全国的に展開していく予定をしています。

SDGsを上辺だけで語るのではなく、地域社会に根差した活動を行いたいという印刷会社の方は、ご連絡いただければ幸いです。一緒に認知症で苦しむ人を無くしながら、元気な高齢者の笑顔あふれる街づくりを行っていきましょう。

株式会社新聞印刷
代表取締役 福山耕治

 

株式会社新聞印刷

・認知症事業の取り組み
http://www.shinbun-p.co.jp/dementia/

・株式会社新聞印刷認知症事業部
http://www.shimpu.co.jp/newjibunshi/

・株式会社新聞印刷ホームページ
http://www.shinbun-p.co.jp/

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